たった1秒のキセキ

たった1秒のキセキ

君と僕が初めて出逢ったのは、友人の結婚式。

新郎の同僚だった僕と新婦の親友だった君は、披露宴入口の受付に、ふたり並んで立っていた。

他のゲストより2時間も前に式場に着いて、手持ちぶさたな僕たちは他愛ないおしゃべりをした。

二次会で新郎が無理やり歌わせた調子っぱずれの『らいおんハート』に、君はお腹をかかえて笑っていたっけ。

でも、そのあとは特に会うこともなく歳月が過ぎていった。

たった1秒のキセキ

仕事が早く終わったある日、駅のホームに立っている君を見かけた!

「僕のこと、覚えていますか?」

いきなり声をかけられて驚いた君は、しばらく僕の顔をしばらく見つめて「ああ、らいおんハートの人!」と言った。

「覚えてくれていた(感激)」聞けば、彼女の会社と僕の会社は最寄り駅が同じ。

でも通勤時間帯が違うので一度も会わなかったらしい。 なんだかうれしくなってしまって、話題の映画やランチのおいしい店などたくさんのことを話した。それもずっと立ち話で…。

たった1秒のキセキ

別れ際、心の奥で『次に会う約束をしろ!』という声がした。

そこで僕が発したのは、今どき博物館でもお目にかかれないほど 古びた言葉だった。

「今度の日曜日、映画に行きませんか?」 それから僕たちの交際がスタートした。

昼休みに会社近くでこっそり待ち合せてランチをしたり、休日にはドライブに出かけたり、どこにでもいるフツーの恋人同士になった。

そして、僕らは結婚した。

たった1秒のキセキ

この前の日曜日、本棚を整理していると…

君の本の間から何かがハラリと落ちた。

見ると初めて一緒に行ったあの映画の半券、しかも日付は4年前の今日だった。

こんなものとっていたんだ…。 そう思った瞬間、君と過ごした年月が鮮やかによみがえってきた。

デートの約束をすっぽかしてしまった時の泣き顔、彼女の両親の前でガチガチな僕を見る心配そうな顔、娘が産まれた時の輝くような笑顔…。

あの日、あの時、駅のホームで出会わなければ、そして映画に誘わなければ、君とこうして一緒にはいなかっただろう。

たった1秒の奇跡・・・

仕事を言い訳に、結婚記念日ですら忘れたふりをしてきたけど、今日はふたりで乾杯しよう。僕のポケットには、小さなネックレスの箱が入っている。もう少しワインを飲んで、君のほほが赤くなったら勇気を出して手渡そう。

「今までありがとう。君がくれた人生に感謝…これからもよろしく!」

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